Friday, June 27, 2008

個人 - individual

社会-societyは,個人-individualの集合体が用いている生活の組織、やり方。という意味があるので、個人-individualについて。

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幕末のころ日本でも出回っていたいた各種の『英華字典』(1822年)では、indibidualの項は、「単、独、単一個」だが、次の例文がある。
There is but a single individual there.
そしてこれが、「独有一個人那所に在り」と訳されている。
【p.25】

「一個人」や「個人」は、individualの意味を伝える訳語ではなかった。「個人」の「個」とは、一個、二個と数えるときの「個」であり、その「個」に「人」が組み合わされた「個人」という複数後は、日本語における伝統的な漢字の語感とは、ずい分ずれていたに違いないのである。
【p.27】

仲間会所即チ政府ニテ、人民各箇ノ上ニ施コシ行フ権勢ノ限界ヲ論ズ
とある。
ミルの原文の方を見てみると、
OF THE LIMITS TO THE AUTHORITY OF SOCIETY OVER THE INDIVIDUAL (J.S.Mill:On Liberty, 1959)
とあり、これは第四章の見出しと、下記始めの部分である。原文の見出し中のindividualhaは、the authority of societyと対立することばである。西欧人のものの考え方の一つの基本であるindividualとsocietyとの対立の図式が、ここにはっきり見てとれる。
【p.29】

individualが、civilizationの重要な要素とされているギゾーの考えを、civilizationのもとの意味にかえって、「都府に住する人は」というようにとらえ、その内容の一つを「身持」として、日本語の文脈でとらえた、と思われる。civilizationとは、もともとcityの形容詞civilの名詞形だからである。
【p.31】

individualということばは、ヨーロッパの歴史の中で、たとえばmanとか、human beingなどとは違った思想的な背景を持っている。それは、神に対して一人でいる人間、また、社会に対して、究極的な単位として一人でいる人間、というような思想とともに口にされてきた。
【pp.32-33】

中江兆民の仏学塾で、1891年に出した『仏和辞林』の改訂版によると、individuの項は同じだが、(「一個物、一個人」)、individualismeの項は、「独立派(理)、独立論、個人主義」となって、「個人主義」ということばがつけ加えられている。この頃から、「個人」ということばが広く使われるようになった。と考えられる。
【p.42】

参照『翻訳語成立事情』柳父 章著、岩波新書。

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