Sunday, September 27, 2009

視覚障害の方々と一緒に美術鑑賞ツアーに参加。

9月25日午後6時30分に乃木坂駅に集合。友人で視覚障害のあるGさんとその奥さんと一緒に、視覚障害者と一緒にアートを鑑賞する〈MARの鑑賞ツアー〉に参加しました。
会場は東京にある国立新美術館、展覧会は〈光 松本陽子/野口里佳〉展。作品は絵画と写真で、当然触ることは禁じられており、同行する健常者が語る言葉だけで作品イメージを互いに共有していく。果たして上手くいくのかどうか疑問もあり、とにかくやってみることに。。。
最初、主催者が2人から3人のグループに分けられた。私は友人夫妻とはなれ、ブラインドのKさんとガイドのTさんのグループに入れていただいた。初対面のお二人とご挨拶して、いよいよ会場へ向った。するとそこからすでに鑑賞ツアーは始まっており、ホワイエの大空間の広さや色や光の様子を言葉で説明。そしていよいよ展覧会場へ。
この展覧会は、画家と写真家の二人のアーティストを〈光〉という言葉で関連づけているが、それぞれ画家の松本洋子と写真家の野口里佳の個展が並列されている。なので、会場入口に解説パネルがあり、その奥に二つの個展の入口が開いていた。そこでまず右側の野口里佳展へ向った。
最初に富士登山の写真。例えばある作品では、大きな石がころがるガレ場を一人がリュックサックを背負って登っている。それは白いきりの中でぼんやりと霞んでいる。画面の大きさは高さ1m以上ある長方形で、登る人物は画面の中央やや下に小さく写っており、画面の上半分は白い霧で真っ白、といった説明。
そして、松本陽子作品の場合、これは全くの抽象的絵画。キャンバスに油絵で、サーモンピンクの淡いグラデーションが渦巻く積乱雲を描いたよう。また、大きな滝壺の近くで水しぶきを浴びているような感じ、だとかいろいろと語った。
Kさんの場合は私たちの言葉と、視力を失う前に見た視覚的記憶を加えて作品イメージを構成するとのことでした。また、Kさんに感想を聞くと、やはりたくさんのいろんな種類の言葉で、つまり豊富なボキャブラリーで、語ってもらうとイメージし易いとのこと。もし先天的に盲目の方の場合、視覚的記憶がないのだがやはり頭の中でイメージが構成されるらしいと、Tさんに教えていただいた。

この体験は、言語ゲームであることが強調される。私とガイドのTさんが語る言葉から、ブラインドのKさんは作品のイメージを頭の中で想像する。ここではまず言葉があってイメージの共有が始まる。そして、互いに言葉によってイメージを膨らませる。また、見えている私たちの視覚的経験も豊かに高められていくようだと思った。
ブラインドの人の立場は、ラジオDJの言葉を聴いているリスナーである私が、時に強い臨場感をもってイメージを膨らませているようなことだろうか。しかし、彼がどんなイメージを思考しているか見ることはできない。だが、他者の思考を見ることができないのは障害の有無に関係がなく平等。共有するのはイメージを語る言葉のみであり、それはまさに言語ゲーム。



展覧会場の外で解散前に談笑する参加者たち。初対面でも一度のこと鑑賞体験を共有すると一気に親しくなることができるようだ。
参加者の皆さん、主催のエイブルアートジャパンの皆さん、どうもありがとう。

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