Tuesday, September 15, 2009

越後妻有アートトリエンナーレ2009、演劇的空間演出

松之山の旧東川小学校がクリスチャン・ボルタンスキーとジャン・カルマンの作品「最後の教室」になっていた。彼らのインスタレーションは、小学校建物の内部全体を使っていた。パスケットボールコートの広さのある体育館、そして三階建て校舎の全て。校舎の外観は取り立てて特徴があるわけではない鉄筋コンクリートの近代的様式の建築。
まず体育館の中に入ると、暗闇の空間が広がっている、無数のボルタンスキー的な弱いオレンジ色に灯った電球がにぶら下がり、床は馬小屋の床のように稲藁が敷き詰められ、藁の臭いが立ちこめている。

体育館をから出て右に曲がると暗闇の長い廊下がある。この廊下にも電球が整然と下げられており、廊下の突き当たりには強い光源の回転灯があり、その先から大きな音が繰り替えし鳴り響いていた。

この廊下の突き当たりに行くと音は爆音になり、更に上に階段を登っていく。。。

ボルタンスキーとカルマンのこのインスタレーションは、演劇的な空間演出に満ちていると思った。一般劇場では、観客は座席にいて劇場が真っ暗に暗転する度に、目の前に舞台に新しい場面が展開する。暗闇とスポットライトによって、劇場の空間は場面が移り変わるシークエンスをつくり出す。そして、幻惑的な照明によって臨場感を増幅する。
この演劇的なインスタレーションは、観客が空間の内部を彼ら自身の足で歩いて進むにつれ、場面の次に次に展開するシークエンスをつくり出していく。
暗闇は、人が目を閉じ思考し空想するようで、観客を強い変成意識へと導入していた。

今年の妻有では、他にも同様の演劇的空間演出を古い建物の内部や夜間の集落の中で展開している作品がいくつかあったことが特徴だったと思う。

ボルタンスキーとカルマンのインスタレーションから出て来ると、地元の老父が受け付けをしており、親しく満面の笑みで話してくれた。この作品が2003年から常設されることになったので、芸術祭の期間中もかつてないほど多くの人々が訪れるようになったこと、そして芸術祭がない冬の季節でも鑑賞ツアーが組まれ大雪の中この古い小学校まで人々はやって来てくれるようになった。

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